新・土と生き物

修論・卒論

2026-02-12 19:40:28
2026-02-12 19:55:24
目次

午前

  • 研究室大掃除

午後

  • 大学業務

  • 卒論手伝い(論文添削)

火曜日に卒論発表会が行われ、2025年度の本研究室の修論・卒論発表は終了した。

修論

  • 鳥取砂丘における植物-昆虫ネットワークの実態解明

卒論

  • 鳥取県東部における水田を利用する鳥類の種多様性と景観要因の関係

  • 鳥取県における海岸クロマツ林の鳥類群集とその決定要因〜広葉樹林化を目指して〜

  • 海岸クロマツ林の広葉樹林化による土壌動物群集への影響〜コウチュウ目、ワラジムシ目、アリ科に注目して〜

  • クロマツ海岸林とアキグミが逸出した海岸林でのオオヒョウタンゴミムシの個体数推定

  • 日本産コシビロダンゴムシ科の分類学的研究

の6名が挑んだ。

修論は、これまで扱ったことのなかったポリネーターネタ。

卒論を含めて3年半の指導をしたのだが、自分自身の知識不足を感じることが多々あった。

ポリネーターや植物-昆虫といった生態学の花形研究にこれまで手を出さなかったのは、まず、私が植物もハチ類も良く知らないこと、そして、研究例が多く、それをレビューする余裕がないことが原因であった。

砂丘に限定すれば植物もハチも少ないだろうから、どうにかなるだろうという思いで学生にネタを提案した。

確かに、植物と昆虫の種数はかなり限定されたので、その点は予想通りだったのだが、論文を読む時間は(想像していたけど)ほとんど確保できず、方針が曖昧なまま終わってしまった。

たまたま本日、学生の研究ネタや指導方針について、他研究室の先生と立ち話をすることがあり、色々と考えるきっかけになった。

とはいえ、鳥取砂丘を対象に、これまでなかった植物-昆虫の相互作用を示す貴重なデータが得られた。

鳥取砂丘では、この10年くらい、様々な動物を対象に分布や季節変化の研究が行われてきた。しかし、生物間の関係性については、ほとんど研究されておらず、この研究の持つ意味は非常に大きい。

今年の卒業研究を一言で表すなら「王道」でしょうか。

今年の特徴として鳥取砂丘ネタがないことが挙げられる。鳥取砂丘ネタは、「鳥取砂丘(砂浜海岸、海岸砂丘)の知見がほとんどない」が大きなモチベーションになることが多い。

もちろん、それは重要ではあるが、いわゆる記載的な研究になるので、学術的な問いに答えるという、科学の醍醐味が弱くなることは否めない。

その点で、今年は砂丘に拘らず、問いを明確にして、調査地点の選定から行ったのは学生にとっても良い経験になったと思う。

野外調査において、調査地選びは最も重要な作業な一つである、、、簡単そうに思えるけど。

キーワードを挙げると、「多地点の群集解析」、「植生と土壌動物」、「標識再捕法」、そして、「コシビロダンゴムの系統分類」で、私自身が永らく関わってきた分野だった。これが「王道」と感じる理由である。

2名が鳥類を対象とした。私は鳥類が全く分からないのだが、同定できる学生が研究室に分属された、、、しかも2名。

そして、私には鳥類を対象に、どうしてもやってみたい解析があった。階層モデリングの一つである多種占有モデルである。

多種占有モデルは、生態プロセスと発見プロセスの階層構造をもったモデリングで、発見率をモデルに明示的に組み込むことで、調査時に鳥がタマタマいないことを考慮して分布解析できる。

また、多種占有モデルのパラメーター推定は最尤法でもできるが、ベイズ推定を使用するのが一般的で、それもやってみたかった。

大変な解析でChatGPTに聞いたら、オーバースペックと言われたけど、苦労しながらも十分に扱えていた。AIもマダマダだなと思った。

3名が海岸林を対象としたことも今年を印象づける点だ。

砂丘の研究に関わるようになり、砂浜生態系自体に興味を持つようになった。

砂浜は劣化が激しい割に、目立つ生物がいないせいか、森林や草原、湿地に比べると圧倒的に研究例が少なく、研究を行うことの重要性を感じている。

その一環として、砂浜海岸の防災林として整備されている海岸林の多様性に注目して研究を行なった。

1名は上記した鳥の研究である。あと2名は土壌徘徊性動物が対象で、1名は、異なる林分状態における群集比較である。

土壌動物を環境指標として扱う、正に土壌動物研究の「王道」の一つである。

私の卒業研究のネタでもあり、私にとって最も馴染みのある研究アプローチであるが、実は卒業研究では、ほとんど扱っていない。ソーティングの大変さと、種分類の難しさのためである。

そして、この研究でも、この2つの問題が露呈した。しかし、学生同士で協力しながら整理を進めてくれたのは、とても嬉しかった。

学生時代に先生に褒めてもらったのだが、土壌動物を種レベルで扱える、ことは特殊能力なんだなと再認識した。

もう一つは、標識再捕法を用いた絶滅危惧種オオヒョウタンゴミムシの個体数推定である。クロマツ林と肥料木が逸出して繁茂したアキグミ林で実施した。

標識再捕法は高校の教科書にも掲載されている有名な動物の調査方法であるが、その基本精神は、動物は現地調査では全てを数えることはできない、である。

これは、多種占有モデルの見落としの考慮を同じ精神である。

結果的に、今年は3テーマで動物の見落としについて考えることになった。

動き回る動物を対象とするので、現地調査で個体数を完全に計測できないのはあたり前のことなのだが、今年の指導を通して、動物を研究することの難しさを再認識するとともに、個体数・分布調査についてキチンと勉強しておきたい、そして、その知識を学生にしっかりと教えたい、と感じた。

オオヒョウタンの研究は、飼育実験も絡めた非常に内容の濃いものとなった。

そして、私にとっての「王道」、コシビロダンゴムシ科の分類学的研究である。

ポスドク時代にワラジムシ亜目の分類研究に手を出して以来、最も長い時間関わってきたのがコシビロダンゴムシ科である。そして、ほとんど進まないまま現在に至っている。

10年以上かけて結論が出ていないネタなので、1年間で結論が出るはずもないのだが、この研究によって課題は整理された。これらから数年で大きく前進させたい。

過去に1例しかなかった女性比率が多い学年だったせいか、明るい雰囲気が漂う1年間だった。

上記したように、ナカナカ大変なネタが多かったが、皆んなで協力しながら、少しずつ進めていく姿は非常に心強く感じた。

研究ネタの特性やAIの登場もあったと思うが、データ解析のレベルは過去最高レベルであることは間違いない。

また、作図も非常に綺麗だった。Rの使い方というゼミを行なっているが、今年は、その意義を強く感じることができた。

本日、全員で大掃除を行なった。すでに追いコンも終えている。卒業式で、卒業生とは会えると思うけど、3年生も含めた全メンバーが揃うことは、もうないだろう。

寂しい感じもあるけど、4月からの新しい生活に向けて、英気を養う時間を過ごしてください。

3年半、1年半、お疲れさまでした、、、修論・卒論、完成させてね。

この記事を書いた人

SK

ダンゴムシ・ワラジムシを研究しています! https://diversity.jpn.org/kara/index.html