
午前
資料作成
午後
卒論手伝い(データ解析)
資料作成
深野祐也 (2025) 世界は進化に満ちている. 岩波書店.
とても分かりやすく、そして面白い。
「進化」と聞くと何万年もかけて起こる現象にように思えるが、その定義は「集団の遺伝子頻度が世代を経るに従って変化すること」であり、これは条件が揃えば数日でも起こり得る。
しかも、タイトルにあるように、世界中のあらゆる場所で起こっている。
筆者は都市環境における進化を専門にしており、都市ではカタバミの葉が赤色に進化することを発見した。
赤色の葉は高温下で緑色の葉よりも光合成活性が高いことが、都市環境で割合を増やした要因だったそうだ。また、遺伝子解析によって、緑色から赤色への進化は複数の場所で独立に生じたことも明らかにしている。
学生時代の外来種ブタクサと外来種ブタクサハムシの研究も面白い。
アメリカ原産のブタクサは日本に持ち込まれると、天敵であるブタクサハムシがいないため、ハムシに対する防除レベルを低下させる進化が生じた。
しかし、遅れてブタクサハムシが日本に侵入すると再び、ハムシに対する防除レベルを上昇される進化が生じたそうだ。
ここに、外来種オオブタクサが絡む。原産地であるアメリカでは、オオブタクサはブタクサハムシに全く被食されていないのだが、なぜか、日本ではブタクサハムシに食べられてしまう。
この現象は、オオブタクサは日本に侵入したのち天敵がいないために防御レベルが低下した。そこに、ブタクサハムシが日本に侵入し、防御レベルが低下したオオブタクサを摂食するようになったと考えられる(筆者によって実験的に検証された)。
その他にも、ハンティングによって角や牙が短くなる進化、漁業によって小さくなる進化、採集によって岩肌色になる進化など興味深い事例がたくさん紹介されている。
これらが「進化」であると理解できるようになることが、この本の一つの目的であると思う。
また、このように環境の変化に対して急速に進化できるのであれば、温暖化や土地開発をしても生物は絶滅しないのではないか、と考えることもできる。
この点についても触れらている。ミジンコを対象とした研究では、すでに温暖化に適応進化が生じているそうだ。
しかし、このような急速な進化が生じるには、その環境への適応遺伝子が集団内に含まれている必要である。残念ながら、そんな都合の良いことばかりではないだろう。
1日で一気に読める。気軽に進化の勉強をしたい人にオススメの一冊。
目次
1 これを読めば進化がわかる!
2 進化は時としてあっという間に起こる
3 都市で起こる進化
4 外来種ももちろん進化する
5 保全の現場で起こる進化
6 これからの進化を予測する